Wed, 31 Dec 2008

愛と痛み 死刑をめぐって / 辺見 庸

愛と痛み 死刑をめぐって
愛と痛み 死刑をめぐって / 辺見 庸
毎日新聞社

ずいぶん久しぶりに辺見庸さんの本を読んだ。この人の本には森山大道さんの写真による装丁がぴったりだ。

講演がもとになっているせいか、加筆、修正が入った本書はそれほど読みやすくない。 (全体的に紙幅が足りなかったんじゃないかとも思った。) それ以上に辺見庸さんがガチンコで死刑について語っているのだから、ハンパなはずはない。 さらに、冗長ゆえに著者の思考をたどることができた森達也さんの「死刑」に比べると、 内容に類似点が多くあるにもかかわらず、ずっと難解というか、まとめるのが難しく、それで僕はこの本の感想を書き留めておくのをやめていた。

でも、今日の死刑執行のニュースに関するmixiでの次のやりとりを読んで気が変わった。

(前略)
死刑執行..たしかに、極刑と言われるとおり、 刑のなかでも、最も重い刑ではあるけど、彼等はそれだけの犯罪を犯したわけなんやで、 自分の命をもって、償わなければならないんだから、 迅速な、死刑の執行が出来る日がくることを願ってやみません...。
(上に対するコメント)
残念ながら自分らが生きている国は刑務所に入ってる人が本を出せる国です

前者の意見はよく目にする。死刑囚を生かすのは税金の無駄とか言われる。いつも無視するけど。 でも、後者の意見には心底ショックを受けた。 「不都合なもの」は何も行ってはいけないのだという考え方はどっから来てしまったんだろう。 この人は自分が「不都合なもの」になる想像力がないのだ。

辺見さんは、我々は「世間」という日本独特の概念の範囲で行動し判断し、 世間は公共とはまったく相反する概念だと説く。世間では、個が埋没し空気を読み同調を求められるという。 死刑を推進する空気があれば、それに乗っかればいい。 同調するのに想像力は要らない。想像力は埋没した個を掘り返してしまうかもしれない。 ならば同調し、空気の先を読むほうがもっと楽だ。 この人はきっとそうなんだろう。

辺見さんの言っていたことが少しだけ分かった気がした。

posted at: Wed, 31 Dec 2008 01:32 [book] permanent link/comments(0)

打倒CO2ってバカじゃない

このあいだ街で見かけた公明党のポスターなんですが、

poster

救いようがないです。このポスターは前からあるみたいなんですが。

気持ちはわかりますよ。温暖化防止を進めたいんですよね。 僕もCO2がなくなったら光合成できないじゃん、なんて揚げ足とりみたいなことはいいません。

でも、生活していればどうやってもCO2は排出されるんです。 途上国もこれからもっと繁栄して今以上にCO2出すんです。 「打倒」するんですか?できるんですか?どうやって?

こういう風に単純化してスローガンだけ語るのは、複雑な問題と背景、解決への知恵を覆い隠してしまうだけ。 顔と名前とキャッチフレーズだけの選挙ポスターと同レベル。

posted at: Wed, 31 Dec 2008 00:37 [carbon] permanent link/comments(2)

Mon, 15 Dec 2008

EUYMO-YELLOW MAGIC ORCHESTRA LIVE IN LONDON+GIJON 2008-(完全限定生産) / YELLOW MAGIC ORCHESTRA

EUYMO-YELLOW MAGIC ORCHESTRA LIVE IN LONDON+GIJON 2008-(完全限定生産)
EUYMO-YELLOW MAGIC ORCHESTRA LIVE IN LONDON+GIJON 2008-(完全限定生産) / YELLOW MAGIC ORCHESTRA
commmons

こういうの買うのは、自分でもバカだと思います。Tシャツが付いてるからってねぇ。 でも、買ってしまったものはしょうがないので一生懸命聞いてます。

YMOっていうバンドにはギタリストが似合いますね。しかも、普通のギタリストではなくて、 渡辺香津美や小山田圭吾、今回のFenneszのような一癖(?)あるギタリストがいいんですね。 そういう人が入ることで、YMOのもつ「ロック、ファンク、フュージョン」遺伝子(笑)が発現して、 なかなかのバンドサウンドになるんですわ。 3人だけだとどうも内にこもってしまっていけません。

今回とくにGIJON後半のライブ感はなかなかです。たぶん、今までで一番のノリだと思います。 別にBPMが速いわけでも、キャッチーなメロでもないんですが、ホントに地味な曲なんですが、ジワジワ効いてきます。

たとえば、WAR AND PEACEは今までも好きな曲でしたが、今回のアレンジが最高です。徐々にはまっていく音に乗っていくうちに、音の渦のなかで首振ってました、一人で。RYDEENはこれまでのアレンジでもっとも原曲に近いです。78/07は正直はずかしくて聴けませんでしたが、これなら聴けます、っていうかヘビロテ。 LODONはべつにいいけど、GIJONにはいってみたかったなぁ・・・。

あ、LONDONが悪い訳じゃないです、どちらかというとLONDONは優等生、エレクトロニカっぽいかな。

LONDONYMO-YELLOW MAGIC ORCHESTRA LIVE IN LONDON 15/6 08-
LONDONYMO-YELLOW MAGIC ORCHESTRA LIVE IN LONDON 15/6 08- / YELLOW MAGIC ORCHESTRA
commmons

GIJONYMO-YELLOW MAGIC ORCHESTRA LIVE IN GIJON 19/6 08-
GIJONYMO-YELLOW MAGIC ORCHESTRA LIVE IN GIJON 19/6 08- / YELLOW MAGIC ORCHESTRA
commmons

posted at: Mon, 15 Dec 2008 23:29 [music] permanent link/comments(0)

若者のための政治マニュアル (講談社現代新書) / 山口 二郎

若者のための政治マニュアル (講談社現代新書)
若者のための政治マニュアル (講談社現代新書) / 山口 二郎
講談社

柄にもなく、政治なんて言葉が入った本を買って読んでみた。

僕は今の世の中生きにくいって思うし、政治家のやりとりを見てるとやる気なくすわけ。 じゃあ、いったいどうしてこうなっちゃったの?って思っても、答えがでない。 小泉が悪いんだって言われても、何でだっけ?っていって思い出せない。 思考停止というよりも、思考できない。考えたって答えはでないから考えない、 考えたっておなかいっぱいにならない。 こういう状況にある人にはお勧めの本。 なんか変だよねぇ、って思っている人とかにもお勧め。 タイトルにマニュアルと書いてあるけれど、むしろ今の社会の副読本的な感じ。 (時間的には2008年の9月ぐらいまでをフォローしている。)

この本に書いてある事実は少し調べればすぐ分かることなのだけれど、 それが起きた時点やニュースでは、それぞれ点と点でバラバラだったものが、 丁寧な説明で繋がってくるという内容はとてもよかった。 (しかも、結構語り口が熱い!)

筆者は(テレビにも出てくるから知ってる人が多いかもしれないけれど)「左」です。本人もそう書いてます。 労働者は団結すべきであり、権利を主張すべきで、権力者は腐敗する、という気持ちで書いてる部分があります(たぶん)。 内容の全てが正しいとは思わないけれど、概ね賛成できる内容です。 昨今の自己責任論をあっさりと論破しているあたりは、気持ちいいくらいです。 そういうわけで、前書きにあるように「権力者の行動を看破できるスキル」を身につけるには良い本だと思います。

最後に一つ備忘をかねてその「スキル」を抜き出してみます。

(権利と特権の違いについて)権利の主張と理不尽なクレームを見分けることは、それほど難しいことではない。自分がしている要求を他の人がすることを許せるかどうかが、重要な基準になる。

当たり前のことなんだけれど、こういう風にはっきり書かれると頭が整理された気持ちになります。

posted at: Mon, 15 Dec 2008 22:38 [book] permanent link/comments(0)

外資?というまえに

自分が勤めてる会社の資本がよくわからなかったり、 外資な人と仕事したり、日本企業っぽい人の話を聞いたり、 お客さんがとっても日本的だったりした経験を思い出してかいてみる。

外資がいい、って言う人の多くはドライなのが好きなんだろうと思う。 嫌な上司につきあわなくていい、能力主義、男女平等、ONとOFFを切り替える等々。

そうはいっても、外資にとって一番大事なのは本国だから、 やっぱり極東の島国の出張所扱い?っていうときもあるし、 急ぎ連絡したくても時差の関係で相手が捕まらなかったり、 「これ外人がかいた文書がもとなんで、わかりにくいですよね」 みたいなどーしようもない言い訳をしないといけなかったり、 けっこーどーしようもない奴とかいたりして、 外資万歳みたいなことはぜったいない。

日本企業のほうがまったりしていていいなー、と思うこともあるし、 上に書いた外資的ドライなことって、日本企業でも基本できてる。 一方「社員はほっておくと働かない」って思っている最低な日本企業がやっぱり存在することは確か。

もうちょっと比較すると、 外資はロジックで話が通ることが多いけれど、日本企業は調整というやつで話が決まることが多い。 ただ、これも比較の話なので、外資で調整がないわけじゃないし、日本企業でロジックがないというのも嘘だし。ちょっとした変わり者に対するキャパは「もうかってる外資」が一番だと思う、証拠があるわけじゃないけど。

あと、調整とかホント嫌いな人は、少なくともお役所周りには近寄らないほうがいいと思うね。 (紙で申請したら、ハンコが5個も6個も押されて帰ってくるようなところ!)

で、もし今、会社を選ぶならば外資、内資ということは全然気にしないで、 給料と次の2点で決めるかな。(別に転職するわけじゃないです)

  1. 部下が会社と上司を評価する仕組みがある
  2. 悪いうわさ話をしない

1.の仕組みがないところには絶対いかない。 2.を見極めるのは結構難しいけど、僕は周りと適度に距離を保って仲良くやりたいタイプなので、 話の半分が人の噂とかいう職場は勘弁してほしい。 (といってる本人がうわさ話が好き、かもしんない。悪気はないんだけど。)

posted at: Mon, 15 Dec 2008 21:40 [blog] permanent link/comments(0)

Mon, 08 Dec 2008

自然言語処理の技術は裏方以上

小町さんのブログを読んでいて、 1点気になった。

自然言語処理のような裏方技術も似たような状況で、「ここに自然言語処理のこの技術を使ったら業務にかかる時間が以前の50%になりました!」とか言っても、営業が「3000万円の案件取ってきました!」と言うのと比べると「フーン」という感じだろうし、あまりに「効率化」してしまうと首を切ろうという話になってしまったりするわけで……。

あんまりおおっぴらにはいえないけれど、自然言語処理の技術はとても「儲かる」技術の一つだとおもう。システム管理のような技術はインフラの名の通り、ビジネスの基盤になるもので、必ず動くことを期待されて止まれば即損失につながってしまうシビアな世界の一方で、効率化を要求される。

でも、自然言語処理はそうではない。技術、処理と名がつくわりには形態素解析の精度は良くて8割、9割。ドメイン適合しても100%にはならない世界だけれど、実は、8割、9割でも十分な世界がごろごろしてる。正確にはごろごろ「埋まっている」。

普通の企業では、あほみたいに文書がたまっている。本当にお金が行き来する仕組みは全部機械がやってるから、人間は文書を書いて、貯めて、読むぐらいしか実は仕事をしていない。どれも人間にしかできないけれど、すでにキャパを越えている。 量産しすぎなのだ。そこに自然言語処理の技術が生かせるだろうと思っている。

人が20時間かかることを10時間でできるようになると単純な効率化だけれど、 それ以上の可能性があって、量が質に転化するというか、また違う世界が待っていると思う。 その意味で裏方以上、3000万の仕事ではなく6000万の仕事がとれる技術だとおもう。

posted at: Mon, 08 Dec 2008 23:23 [blog] permanent link/comments(0)

Tue, 02 Dec 2008

田母神の一件がダメだった理由

先月の話なんですけどね、なんか遠い昔みたいな話になっちゃいました。 あの話題の何がダメだったのか、無い知識でときどき考えていたけれど、備忘録として書いておくことにする。

あのニュースを最初に聞いたときに思い出したのは、恥ずかしながら、パトレイバー2の「柘植」なんですね。 映画の柘植のようなクーデターでもテロでもないんだけれど、田母神氏の発言や論文からは、 彼が持つ現実や歴史観に対するいらだちみたいなものを感じたからです。

で、論文を斜め読みして、要旨や解説を新聞で読んだけれど、確かに稚拙だと思いました。論文というより感想文じゃない?みたいな。 でもむしろ僕は、みんなが批判する内容云々というよりも、加藤陽子さんの「戦争の日本近現代史」にあるような、

歴史には「出来事=事件」だけでなく「問題=問い」があり、そのような 「問い」のかなりの部分は、時代の推移とともに人々の認識や知の型が、がら りと変わるのはなぜなのか、あるいは、人々の複雑な行動を生み出すもととなっ た深部の力は何なのか、この二つの問題を考える点に集中する(中略)太平洋 戦争だけを取りあげて「なぜ、日本は負ける戦争をしたのか」との問いを掲げ てみても、「正しい問い方」をしたことにはならないのではないでしょうか。 (中略)「なぜ、日本は負ける戦争をしたのか」「なぜ、日本は無謀な戦争に 踏みきったのか」といったような問いが、なぜ「正しい問い方」をした問い方 でないかといえば、そうした問いは、もし日本が戦争に勝利したとしたら問わ れることのない地点から発せられている問いだと思われるからです。(本書で は一部傍点つき)

というような観点がさっぱり感じられなくて、得るものが何もない空虚な論文であるという印象をもちました。 実際、最初から最後まで間違ったこと書いてるけど将来に向けて傾聴に値する点が・・・、みたいな批評はほとんどなかったとおもいます (だから、論文ではなくて感想文なのかもしれません)。単なる反面教師的な扱いをされてしまっただけです。

歴史論文であったとしても、そういった現実に対する具体的な要求や提案がないこと(あえて書かなかっただけかもしれませんが)は、 先の映画の最後に柘植が言った

「もう少し、見ていたかったのかもしれんな(略)この街の、未来を」

という台詞と共通するもので、それは、一発(論文)かましてみたけど後はどうなるか知らない、ということです。 つまり、おっさんが「わけぇの、おまえらの考えはまちがってんだ。本当はかくかくしかじかでな。あとはおまえらやってけ」という感じです。 現実に対する危機感があることはなんとなくわかりますが、責任感(という言葉は好きじゃないのですが)、 その手の覚悟みたいなものが感じられません。

映画だと余韻を残して綺麗にまとまりますが、現実ではフォロワーの出にくいやり方であると思いますし、 この件で田母神氏が一時的に有名になることはあっても、今後思想的な影響力を持ち続けることはないでしょう。 せめて、退職金を使って私塾をつくる、みたいな話を嘘でもすれば人が集まったかもしれませんが、 財布が苦しいから貰う、とか言ったので、正直その程度どの人でよかったなぁと思います。

もうひとつ引っかかっていたのは、参考人招致で「言論の自由がある」と言っていた点です。

言論の自由はなにより尊重されるものであるはずですし「言論が不自由」な状況なんて考えたくありません。 一方、何でもいっていいはずはありません。私には業務上の守秘義務やプライバシーを守る義務があります。

今回の一件は、文民統制と言論の自由が天秤にかけられていたはずなのですが、マスコミは「言論の自由のはき違え」としかいいません。 えー、一体どうはき違えてんのよ、というのが素朴な疑問でした。

内田樹氏の言論の自由についてとか読んでみても、 結局「私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利には賛成だ」(ボルテール)の若干の焼き直しだし、 「文民統制」がどんだけ大事かは、ソマリアとかの失敗国家を見ればわかることだし...と思っていたところで

なぜ文民統制は繁栄を導くのか?に、

責任ある立場にあった自衛官が、公的な武力の職掌にありながら、国会の場で「言論の自由」を主張する時、国政に与るものは法に照らして適否を示すべきです。またマスコミなども、あいまいな基準でなくルールに則った議論をすべきと思います。「言論の自由」のはき違えには、本質的には憲法に即した解釈と訂正がなされるべきで、必要によって最高裁以下司法権の判断が下されるのが、「法治国家」であり、経済的に一等国の信用も持つ日本として、本来取られるべき姿勢だと思われます。

と書いてあるのを読んで、自分には手に余ることを考えていたことに気がつきました。

ま、そんなわけで備忘のためにかいてみたわけです。

posted at: Tue, 02 Dec 2008 00:51 [blog] permanent link/comments(19)

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